2014/06/20

More than honey

岩波ホールで上映中のMore Than Honey (邦題「みつばちの大地」)を見てきた。スイスの養蜂家一族に生まれたマークス・イムホーフ(Markus Imhoof)監督の作品。

ハイスピードカメラを高性能小型ヘリコプターに搭載して撮影した雄蜂群と女王蜂の空中交尾の映像や、女王誕生の瞬間を驚くほど高鮮明に写し出したミクロ映像記録は、日頃ミツバチを見慣れている身にも別次元の世界のように見えた。

一方、経済活動に組み込まれ、消耗生産材として扱われるミツバチ達の姿には、悲しみを通り越して怒りさえ感じた。

  • 広大なアーモンド畑で花粉交配のために過酷な労働を強いられ、
  • 大型散布機から吹きつけられる農薬にまみれ、
  • 最新養蜂テクノロジーで女王蜂やローヤルゼリーを不自然に作らされ、
  • 病気になれば無造作に焼き捨てられる。
そんな作業を機械的にこなす従業員の態度には、ミツバチに対する敬愛や哀れみの情など微塵も感じられない。

CCD(蜂群崩壊症候群)の原因究明のドキュメンタリー映画だろうと予断していたが、イムホーフ監督がこの映画で描き出そうとしたのは、CCDでもミツバチでもなく、利益至上主義に侵された現代文明の中に生きる哀れな人間の姿だった。

(注) 写真は全て「More than honey」のオフィシャルサイトから。