2016/07/26

壁土探訪

(NHK大河ドラマのオープニングの題字。左官・挾土秀平氏が土壁に掘り込んだこて文字)

菅平湿原での植物観察会への参加を兼ねて、今では長野県内に一軒しかないと言う"ベト屋さん" 小坂商事さん千曲川河畔に訪ねた。失敗したビースケップの壁塗りに再挑戦しようと、壁土を仕入れるためだ。


小坂商事さんには、"ベト練り40年"のベテラン女将がいるらしい。そのプロの知恵も借りようとバルカン半島コッツウォルズのビースケップを車にトランクに積んで行った。

「ミツバチ巣箱の壁塗りなんてワシも初めてだ」と少々戸惑いながらも、女将さんは色々と示唆に富むコメントや解説をしてくれた。


土壁は大雑把に、「粗壁」、「中塗り壁」、「仕上げ壁」と三層に塗られていく。それぞれに、粘土の質や練り方、繫ぎとして入れるスサ(通常は稲藁)の刻み方、水加減などが異なる。

粗壁用壁土は中塗り壁土をしっかりと掴んで吸着するために、ヒビ割れがたくさん出るように練られた土。ということでミツバチ巣箱には向きそうにない。
女将さんの助言を受けながらスケップ用として選択したのは”中塗り用”壁土。ひび割れが少なく、比較的薄く塗れるのがいい。外観もきれいに仕上がるようだ。

中塗り壁土の作り方は粗壁用とはずいぶん異なる。まず粘土を溶けたチョコレート状になるまで練りあげる。機械で半日以上も攪拌するそうだ。(昔、普請の時、近所の人が総出で足踏みして泥土を練っていた記憶があるがあれは粗壁土だったようだ。)

そこに砂と繋ぎの "スサ" を混ぜ込む。砂を入れるのは乾燥した時の収縮率が減らして、ひび割れを減らすためらしい。
スサは稲藁を5〜6cmにぶつ切りにする荒壁用のものとは異なり、中塗りでは藁を細く砕く。昔は、使い古しの縄や筵(むしろ)を解いて使ったらしいが、今では特殊な機械で稲藁を砕いて作っている。繋ぎとしての粘性が高まるらしい。
「なんか今度は上手くいきそうな気がしてきました」と言うと、「あとは塗り手次第だね」と女将さんは愛想のない返事だった。

まずはリハーサルをと、竹製のフラワーポットのカバー篭に塗ってみた。まだ完全に乾いてはいないが、ひび割れも生じず今のところはうまくいきそうな感じではある。

スケップのおかげで、今回は土壁のことを色々と調べ、改めてその奥深さに感心した。土壁は究極の”パーマカルチャー建材”と言っても過言ではない。