2015/10/23

カルーナ・ブルガリス (Calluna Vulgaris)

エリカ・カルネア(Erica Carnea)に混植する"ヒース"樹種をカルーナ・ブルガリス(Calluna Vulgaris)に決めた。

蜜源環境を向上させるため山荘の庭にヒースを植えようと思い立ってから、ネットで情報を集め、関連本に目を通し、大型園芸店を何軒か訪ね歩いたが、俄かガーデナーにはそうたやすい作業ではなかった。

樹種の選択基準は . . .
  • 花期が秋〜春(特に晩秋〜早春)で、
  • 一株に小さい花をたくさんつけ、
  • 開花時期はできるだけ長く、
  • 氷点下20度前後の寒冷地でも露地で育ち、
  • ミツバチが好んで訪花する。
. . . とハッキリしているのだが、「エリカにすべきか、カルーナにすべきか?」と、まず入り口で立ち止まってしまった。

英語のHeathという言葉は、ヒース(heath)とヘザー(heather)の両方の花木を指すようだが、植物学的には、ヒースはツツジ科(Ericaceae family)エリカ属(Erica genus)、ヘザーはツツジ科カルーナ属(Calluna genus)と、それぞれ違った「属」に分類される二種類の異なる常緑樹なのだそうだ。

映画「嵐が丘」の舞台になった英国ヨークシャーの荒野(上写真)に群生している灌木の多くがカルーナ属のブルガリス種(Calluna vulgaris)。ヨークシャーはヘザー・ハニーの産地としても有名だ。

また、中世から伝統的養蜂が続いているドイツ、リューネブルク(Lüneburg)の原野に生えているのも主にカルーナ属の"ヒース"。であれば、蜜源樹種としてはカルーナ属のヒース(右写真)が本命であることはまず間違いないだろう。

とは言え、一方ではイギリスやスイスで市販されている蜂蜜の多くに"エリカ・ハニー"と名前がつけられているものが多いのも事実。エリカ属ヒースも検討樹種から排除するわけにはいかない。

("エリカ"・ハニーは、花蜜の樹種に関係なく、荒地、痩せ地、不毛の地、ジメジメした湿地、. . . など、"Heath"という言葉に欧米人が感じるネガティブイメージが嫌われ、美しい響きの”Erica”のネーミングを使うため、と私は勝手に推測しているだが?)

というわけで、結論はエリカ属とカルーナ属の両種から”冬咲き種”の代表樹種を選抜し、それぞれが、八ヶ岳高原の冬にどのように適応するかまず見ることにした。耐寒性には不安があるが、秋咲きのエリカ・メランセラ(Erica Melanthera)系の樹種も念のため数品種植えてみる。

備  考:
  • 外観や植生がソックリなこともあって、日本の園芸店だけでなく、本場イギリスやドイツでもヒース、ヘザー、エリカ、カルーナなどの語句はしばしば混同され(あるいは誤用され)ているようだ。その上、園芸用のエリカやカルーナには花期などの植生の異なる無数の変種・改良種があり話はよけいにややこしくなる。購入樹種を決める時にはよほど注意しないといけない。(Better Homes and Gardens)
  • この時期、日本の園芸店で販売されている”ヒース”の多くは「カルーナ属」のヒース、中でもドイツの会社が品種改良した「GardenGirlsシリーズ」が圧倒的に多い。このガーデン・ガールズ系のヒースは、花の色を長期間保持するため、蕾のままで開花をしないように品種改良されているようだ。鑑賞用の園芸種としては良いだろうが花が開かないのでは蜜源花としては困る。
  • ヒースに関する日本語情報源としては「ヒースランド岩手」のWEBが詳しい。