2010/01/04

風の中のマリア

不思議な読後感の残る本。
仲間内で一番の博学・雑学を誇るバンカーのYS氏が年賀状の余白で一読を勧めてくれた本「風の中のマリア」(百田尚樹著)。

主人公は一匹のオオスズメバチ。名前はマリア。
ほかの虫を殺戮することに生き甲斐を感じる自分って一体何者なの?

仲間の危機に遭遇すると、自分の命をかけてでも闘いを挑みたくなるこの熱情はどこから湧いて来るの?

同じメスなのに、なぜ自分は女王様のように恋をしたり赤ちゃんを産んだりすることができないの?
    . . . . .  次々と浮かんでくる疑問と悩み。

    絶え間なく起きてくるトラブルとの闘いに明け暮れ深く悩んでいるヒマもないハタラキバチのマリア。マリアが自分の人生(蜂生?)の意味に気付き始める頃には、彼女の短い生涯はもう終わりを告げようとしていた。

    オオスズメバチは、ミツバチにとって最大の天敵。これまでは、巣箱の周りに翔んで来ると、憎しみを持ってネットで捕殺し踏み潰していたが、この本を読んだ後はその戦意も鈍りそうだ。

    蛇足:
    著者が主人公のススメバチをマリアと命名した理由が分かるような気がする。それも「エル・エスコリアルの無原罪の御宿り」(写真)に描かれている純真無垢な瞳のマリアに違いない。と言っても、蜂飼いの世界では、“無原罪の御宿り“はハタラキバチによる「無精卵産卵」で群を崩壊させる凶事の一つ。