2009/10/01

飛鳥美人とクロスズメバチ

地バチ(クロスズメバチ)を追っかけ、巣を見つけて蜂の子を採る「すがれ追い」は信州地方の秋の風物詩。

この「すがれ」という言葉は単なる方言と思っていたが、飛鳥・奈良時代まで遡る由緒のある古語ということを昨夜のNHK TV番組「ためしてガッテン」で知った。

調べてみると、万葉和歌巻代三〔379〕に、次のような長歌がある。

. . . 珠名は 胸別(むなわけ)の ひろき吾妹(わぎも) 腰細(こしぼそ)の すがる娘子(をとめ)の その顔の 端正(きらきら)しきに . . .

蜂のように腰がくびれたスタイル抜群の美女、珠名という名前の女性を詠んだ歌。千葉県富津市出身の女性で、同市には、この女性を祭った珠名塚という史跡があるそうだ。

そう言えば、去年5月、東京国立博物館の「国宝薬師寺展」で展示されていた日光・月光菩薩像の腰も大きくくびれていた。“すがる”スタイルは、当時の美人の重要な要素だったようだ。

その上、女性の美しさをスズメバチに喩えて表現していることにも興味をひかれる。ロッキード事件の “蜂のひと刺し” や、昨夜のNHK番組のテーマ “街の殺し屋スズメバチ . . . ” とは随分イメージが違う。
当時のスズメバチと人間との関係は、今とは違ってかなり友好的な関係だったのかもしれない。